サステナビリティ

スマートグリッドが分散型エネルギーを可能にする社会を創る

スマートグリッドサステナビリティ

地球的規模の課題として、環境・エネルギー問題が深刻化するなか、世界は地球温暖化の防止、エネルギーの低炭素化を目指すために、私たちのエネルギーへの関り方に注目が集まっています。その道筋づくりや技術革新の研究を進める上で、重要なキーワードが「スマートシティ」です。

スマートシティを構成する様々な技術の中でも「スマートグリッド」は中心ともいえる存在となります。スマートグリッドにより、どの様に社会が変化するのか見ていきましょう。

スマートシティへの挑戦

スマートシティ

次世代エネルギーシステムとして注目されるスマートグリッドですが、その話をする前にまずはスマートシティについて知る必要があります。

スマートシティとは、ITを活用してエネルギーや資源などを効率よく使う環境配慮型都市のことをいい、環境に配慮した人々の快適で安全・安心に暮らせるサステナブルな社会を指します。

国連の報告によると世界人口が現在の77億人から2050年に97億人へと激増し、その7割が都市部に暮らすとされています。急速な都市化が進むことで大気汚染などの地球環境や地域格差という面からも今のままでは成り立たなくなることが予測されています。

そんな中、地球環境に配慮したCO2を排出しないエネルギーでの低炭素社会実現に向け、CO2排出ゼロや再々可能エネルギーへの関心も高まっております。

スマートシティは再生可能エネルギーを活用し環境・エネルギー問題を解消する持続可能な次世代都市として世界から注目されているのです。

こうした中、エネルギーの消費を最適利用促進するために、エネルギーの供給側と需要側をICTによって双方向ネットワークで結ぶ「次世代の伝送配電網」つまり、スマートグリッド構想の実現が必要不可欠なのです。

スマートグリッド構想が実現されると、私たちの社会はどのような変化が起こるのでしょうか。

スマートグリッド構想とは

スマートグリッド_HEMS

これまで電気は電力会社から一方的に送られてくるのが常識でしたが、近年では電力の買い取り制度も始まり、個人や電力会社以外の企業も発電事業に介入してきました。

そこで太陽光発電や風力発電などの分散型電源システム、太陽光発電や風力発電が天候に左右される問題を補う電力貯蔵システム、さらには廃熱を冷暖房に利用したガスコージェネレーションなど、分散されたエネルギーを双方向ネットワークでつなぎ、その電気を住宅やオフィスの需要にあわせて効率的に供給するための仕組み作りが進められるようになりました。それがスマートグリッド構想となります。

では、スマートグリッド構想の特徴を見ていきましょう。

ポイント1:エネルギーの「見える化」

スマートグリッドの最大の特徴はエネルギーの「見える化」にあります。見える化にはEMSを使い可視化していきます。

EMSとは、エネルギー・マネジメント・システムの頭文字をとったもので、電力使用量の可視化、節電のための制御機器、再生可能エネルギーや蓄電貯蔵システムの制御等を行うシステムを意味します。管理対象ごとに住宅向けのHEMS(ヘムス)、商用ビル向けのBEMS(ベムス)、工場向けのFEMS(フェムス)に分けられ、HEMS、BEMS、FEMSの3つを含めた地域全体の電力需要と供給をCEMS(セムス)でコントロールします。

日本では革新的エネルギー・環境戦略として、2030年までにすべての住まいにHEMSを設置することを目指しています。スマートグリッドが家庭に入ることで住宅で使用しているエネルギーを使用量や稼働状況をタブレット端末やPCなどで見える化が可能となります。消費者自らが電気の使用状況を把握することで、エネルギーをリアルタイムで確認しながら無駄な消費を減らし、かつ快適な生活を実現しようとしています。

ポイント2:エネルギーの「一元管理」

スマートグリッド

ニーズの変動にあわせてエネルギーを最適化していくためには、地域の電力量の利用状況を把握し、適切に管理していくことが必要です。地域のエネルギーの需給のバランスはコントロールセンターにより調整されます。

電力調整のために必要な情報を得るために、これまでの電力メーターに代わる通信機能のついた「スマートメーター」が各家庭に設置されます。スマートメーターからコントロールセンターへ電力の使用状況データが発信されることでリアルタイムに電力需要を把握できるようになります。

またコントロールセンターからスマートメーターに情報の受信が可能となります。これにより地域全体の電力需要が逼迫した場合には、コントロールセンターからその情報を受け取り、家庭内における家電などを省エネモードに切り替えるなどして消費電力量を制御することが可能となるのです。

ポイント3:エネルギーの「ロスをなくす」

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーのデメリットは、日照時間や悪天候に大きく影響を受けることにより、電力の需給バランスが不安定となることです。スマートグリッドはその様な状況でも快適に生活できるための工夫があります。それが電力貯蔵システム、つまり蓄電池です。また技術進歩が進んだことで、次世代自動車の蓄電性能(V2Hが進化し利活用されるようになりました。

家庭用電池や次世代自動車では、電気代の安い時間帯に充電し「夜ためて、昼使う」ことや、太陽光発電によって次世代自動車に充電し「昼ためて、夜使う」ことが可能となります。また再生可能エネルギーで発電した電気で使用しきれない分については電力の買取をする仕組みなどもあり電力が適切に活用されるようになります。

家庭用蓄電池や次世代自動車は災害時における非常電力源にもなるため、災害に強い街づくりのためにも期待が高まっています。

ポイントその4:エネルギーの「融通できる」

スマートグリッドの双方向電力ネットワークのメリットは、必要なエネルギーを必要なところに融通し合うことが可能なところにもあります。昼間人口など異なる地域間において各家庭で発電した電気をビジネス街へ供給したり、悪天候などの理由で発電できない地域に対し、天候の良い地域で発電した電気受け渡しするなど、地域単位で電気の融通し支え合うことが可能となるシステムなのです。

 

スマートグリッドで2℃目標を実現する

SDGsパリ協定以降、温室効果ガス排出削減等のために世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より充分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする「2℃目標」に向け世界的に低炭素社会・脱炭素社会を目指す動きが加速しています。

2℃目標実現のためには、CO2など温室効果ガスの排出量を出来るだけ減らす必要があり、私たちの生活に使われるエネルギーも低炭素化が求められています。

人々が再生可能エネルギーとうまく付き合っていくことで、結果的に低炭素社会の実現につながることからもスマートグリッドへの関心が高まっています。

まとめ:スマートグリッド構想

如何だったでしょうか。

スマートグリッド構想は、分散型エネルギーをリアルタイムで確認しながら消費電力の抑制や管理をすることでエネルギーの無駄な消費を減らすことを可能にします。

そして世界的な人口増加や都市化によるエネルギー問題を解決し、私たちの生活をより便利で快適な社会を創ることも可能になるのです。

私達が進む未来には、エネルギーとIoT技術が融合した新しい世界が待ち受けていることでしょう。

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