サステナビリティ

スマートモビリティはIoTがもたらす未来の交通インフラ

スマートモビリティはIoTがもたらす未来の交通インフラサステナビリティ

私たちの身の回りの様々なモノをインターネットで繋ぐことをIoTと言いますが、そのテクノロジーによって街まるごとIoT化するスマートシティが世界で注目されています。そのスマートシティを実現する上で交通インフラの中心的な役割を果たすのが「スマートモビリティ」です。

これから本格化していくスマートモビリティ社会によって解決できる課題とはどのようなものでしょうか。私たちの社会を変える可能性を秘めたスマートモビリティが実現する世界とその変化について見ていきましょう。

スマートモビリティ社会とは

Smart Mobilityイメージ

近年、人口密度が低い過疎地域では公共交通サービスの維持確保が困難な状況にあります。また大都市圏では道路の混雑やドライバーの不足が発生するなど、地域によって様々な課題があります。そんな「移動」に関する社会課題を解決し、人々がより豊かな生活をおくるための社会作りの一環として進められているのが「スマートモビリティ」です。

私たちはこれまでモビリティ(移動手段)の進化とともに歴史を歩んできたといっても過言ではありません。そして今まさに移動の概念が変わろうとしています。

モビリティ × ICTの融合

様々な課題が顕在化する一方で、ICTや自動運転等に必要な人工知能技術開発やビッグデータ、5Gの登場によってIoT化された新たな交通手段(モビリティサービス)が可能となりました。

これによりモビリティサービスは単なる移動手段としての提供ではなく、利用者にとって”ワンストップでシームレスな利用体験ができるサービス”になりつつあります。こうした背景から、IoTやAIを活用した新たなモビリティサービスの社会実装化と、それを通じた経済活性化への挑戦に、意欲的に取り組む地域や企業を応援するプログラムが始まっています。

スマートモビリティチャレンジで新たなモビリティサービスに取り組む

スマートモビリティチャレンジとは、公共交通分野の運行情報等のオープンデータを活用したスマホアプリによる情報提供の実証実験を官民連携で行う取り組みです。地域特性ごとに交通分野における様々な課題の解決を目指したモビリティサービスのモデル構築を横展開し、スマートモビリティ化によって交通システムの最適化を狙っています。

モビリティと非モビリティの連携は、多様な移動手段の確保と地域の多様な経済活動、そして地域全体の活性化を促し、Society5.0が目指す持続可能な社会への大きな一歩となることでしょう。

スマートモビリティ化で変わる自動車産業

これからの10年で自動車産業及びモビリティを取り巻く環境は大きく変化することが予測されます。IoT化されたコネクテッドカーや急速に進展する電気自動車や自動運転技術によって、交通事故や道路の渋滞などから解放され、環境にも優しく快適で安全な移動手段の確保が日常となります。

今後、次世代のモビリティサービスMaaS(Mobility as a Service)や自動車のCASE(Connected Autonomous Shared Electric)などの新しい概念によって、車の付加価値が大きく増大し、成長産業になる可能性を秘めています。

自動車産業も金融業界と同様に先行きに閉塞感が漂う産業ですが、先端テクノロジーを活かすことによって、未来の自動車産業はモビリティ産業として生まれ変わっていくことになりそうです。

車の価値が大きく変化し「保有」から「共有」に変わる今を勝ち抜く競争力が求めらています。これまでの様に車を製造し提供する立場から、移動プラットフォームの市場を広げモビリティサービス提供にシフトする必要があります。

今後はこれまでの収益構造が劇的に変化することが考えられ、変化に対応できる企業やそのグループ企業、ステークホルダーの確立が企業価値に大きな差を生むことになりそうです。

 

次世代モビリティサービス 「MaaS」

MaaS-移動手段サービス

新たなモビリティサービスであるMaaS(Mobility as a Service)は、多様な移動ニーズを持つ地域住民や旅行者がスマホアプリ等を使って、複数の公共交通やその他移動サービスを最適に組み合わせて検索から予約及び決済を一括で行うサービスです。

MaaSが実現されると移動手段の選択肢が広がり、出発地から目的地まで一連の移動をワンストップでシームレスなサービスが提供されます。移動時の利便性が向上するだけでなく、地域や観光の移動手段の確保や充実、高齢者や障害のある人など交通弱者の移動手段を確保し、外出機会の促進と交通安全の向上等に期待されています。

さらにMaaSを通じて交通機関と観光スポット・宿泊施設から医療・福祉・行政サービスなど幅広いサービスと連携し、予約及び決済も一括でできるようになると、新たな付加価値が生まれ地域の活性化に繋がる可能性が広がります。

またカーシェアリングが進むことによって、マイカー所有が減少し、環境への負荷の低減、空間利用の効率化になることからもSociety5.0の超スマート社会実現へと期待が強まります。

スマートモビリティで解決できる社会の課題

Smart Mobilityが渋滞を解消

スマートモビリティを考えるとき、日本が抱える課題についても考えていく必要があります。

日本の将来推計人口は人口減少と高齢化が進み、人口の分布は東京圏・名古屋圏・大阪圏の三大都市圏への人口集中が進むこともあり、自治体の大半は5万人未満が増加することが予測されています。

人口ではあまり差がない規模の自治体であっても、人口密度の格差や昼間と夜間人口の格差が大きく、地方の郊外地域などにおいては、高齢化がその他の地域よりも進んでいる状況など地域によって課題は様々です。

日本における現状と社会的課題をスマートモビリティはどう解決していくのでしょうか。詳しく見ていきたいと思います。

都市や地方の交通課題を解消する

ロボットタクシー

年々人口が流入が見込まれる三大都市圏においても、深刻な交通渋滞や通勤時における満員電車などの公共交通や道路の混雑が課題となるなど、人口が多い少ないに限らず全国的なものとなっています。さらに地方においては人口減少によって交通機関の経営が悪化し、路線バスや地域鉄道の路線廃止が進んでいます。また高齢者の免許返納件数が伸びていることにより、自家用車への依存度が高い郊外や過疎地域における公共交通の減少が、高齢者や移動弱者の深刻な問題になりつつあります。

こうした多岐にわたる課題に対して、スマートモビリティ社会はロボットタクシーや無人バスなどのコネクテッドカーの普及とオンデマンド交通によって、多様なニーズの交通需要に「必要なときに必要なだけ」と柔軟に対応することが可能となります。

また、無人運転による自動運転技術が本格化することで交通事故のほとんどが無くなる他、運転手不足の課題解決にも期待が寄せられます。

高まるインバウンド需要はMaaSが解決する

インバウンド需要と観光立国

延期となった東京オリンピックや2025年の大阪万博はじめ、年々、訪日外国人旅行者の増加が見込まれることもあり、インバウンド需要対応の重要性も高まっている一方、ドライバー不足の問題や訪日外国人旅行者の公共交通機関の複雑さへの不満も指摘されています。

観光地は都市や地方のどちらかに限ったものではないため、共通項を見出すのは難しく、複数の観光スポットを繋ぐ移動手段が求められています。訪日外国人旅行者の多様なニーズに対応し、回遊性を向上するモビリティを提供することが重要です。

スマートモビリティが実現した社会では、カーシェア・シェアサイクル、オンデマンド交通超小型モビリティグリーンスローモビリティなど回遊性の高いサービスを活用することで、移動手段の選択肢を広げインバウンドにおける移動の問題を解消していきます。

また、訪日外国人旅行者を対象とした全国的な観光MaaSの提供が実現されると、複数の交通網や宿泊施設施設、観光目的地などが連携し一括予約と決済が可能となります。MaaSを通じて観光の利便性を高め、回遊行動をさらに増やすことが出来そうです。

バリアフリーへの対応、誰もが移動を諦めない世界

バリアフリー

障害のある人や高齢者などが自立して生活し、社会への積極的な参加の促がすために、利便性の高い公共交通や施設整備のバリアフリー化など進めてきておりますが、多様な特性をもつ利用者やニーズに応えるためには、移動弱者に対する日々の暮らしの基盤づくりとするユニバーサルデザインへの対応が重要です。

障害がある人や高齢者、訪日外国人観光客など何らかの理由で移動にためらいのある人々に、誰もが行きたいときに行きたい場所へ自らの力を諦めずに不安なく移動できる社会の実現策としてユニバーサルMaaSがあります。

ユニバーサルMaaSは誰もが快適でストレスのない移動を提供するためのサービスです。ユニバーサルデザインの発想で複数の公共交通を一つのサービスとして提供するとともに、利用者のリアルタイムの位置情報や必要な介護情報をサービスの提供者と共有し連携することによって、シームレスかつユニバーサルな移動体験の実現します。

温室効果ガスによる地球環境の負荷を解消する

Smart Mobilityが温室効果ガスによる地球環境の負荷を解消

人々の生活の利便性が向上する一方、地球環境への負荷増大を背景に持続可能な開発目標であるSDGsパリ協定が採択されました。

国連に提出した地球温暖化対策計画の目標「2030年度に2013年度比26%のCO2排出量を削減」を達成するためには、自動車の低炭素化はもちろんのことマイカー利用から低炭素な公共交通への転換が不可欠です。

その転換の1つに、電動で時速20キロ未満で行動を走ることが可能な4人乗り以上の乗り物グリーンスローモビリティに注目が高まっています。高齢者でも運転がしやすく、軽量でコンパクトであることから道幅が狭く、これまで公共交通が整備できなかった地域の足として活躍が期待されます。

また、環境問題解決の大きな足がかりとして、自動車の低炭素化が注目されていた電気自動車ですが、ガソリン車の歴史よりも古いにも関わらず実用化の技術に問題があり、普及が進んでおりませんでした。

しかし、普及の障壁となっていたバッテリーの容量や充電速度や航続距離といった課題は、飛躍的な進歩をもたらすバッテリーが登場したことで実現の突破口として期待されています。

自動運転技術にカーシェアリング、オンデマンド交通、コネクテッドカー等によってマイカー所有から低炭素な公共交通への転換を実現することで、2℃目標を達成できるかもしれません。

進化するモビリティサービス

未来のモビリティのニーズが「所有」から「利用」へと変化していく中、より安全で利便性の高いサービスが求められていきます。モビリティサービスは加速する未来に向かって進化し、時代が求める価値を創造していきます。今後進化していくモビリティサービスとはどの様なものがあるのでしょう。

自動運転バス

自動運転バス

利用者の移動需要に応じて乗り合いバスを運行するデマンド交通の取り組みが、地方の交通空白地で実施されていますが、その多くは人が走行ルートや配車を判断する仕組みです。

今後は利用者の移動需要をリアルタイムに予測する人工知能の活用や、利用者の要求に応じて最適なルートを計算し、リアルタイムに車両を配車する技術を活用したオンデマンドの自動運転バスが展開されていきます。

カーシェアサービス

カーシェアサービス

カーシェアサービスとは、スマホアプリ等によって自動車のレンタルや返却に係る手続きを簡素化した自動車のシェアサービスです。借りた場所への返却が前提となるラウンドトリップ方式や、一定エリア内であれば路上や公共駐車場などで自由に乗り捨てが可能なワンウェイ型のフリーフロート方式などの種類が存在します。従来のB2C方式だけでなく、1台の自動車を複数の利用者で共同使用するカーシェアサービスも展開されています。

定額制サービス

定額制サービス

カーシェアリングとは一線を画すのが自動車の定額制サービス(サブスクリプション)。これまでのマイカーの概念を変える新しい自動車の所有のしかたとして大きく広がる可能性があります。さらにMaaSのサブスクリプションモデルは月額定額で公共交通、自動車、タクシー、カーシェア、シェアサイクルなどを利用できるようになるため、個人個人のニーズに合わせた移動手段を選択できるようになります。

エアモビリティ

エアモビリティ

エアモビリティは「空飛ぶクルマ」とも呼ばれ、電動型で垂直離着陸ができるeVTOL型のものが有名です。日本でも2018年に未来投資戦略2018を閣議決定し「空の移動革命に向けたロードマップ」を取りまとめ、エアモビリティ事業を2023年から開始する目標を世界に先駆けて掲げました。「物の移動」「地方での人の移動」「都市での人の移動」を段階的に進めていきながら2030年代からの実用化に向けて取り組んでいます。

 

まとめ

日本は、少子高齢化による人口減少、エネルギーや環境問題など、様々な社会課題に直面している「課題先進国」です。第4次産業革命の社会実装によって、日本の強みとリソースを最大限活用し、誰もが活躍でき、様々な課題を解決できる持続可能な社会Society5.0実現するとともに、誰一人残さないSDGsの達成に寄与しようとしています。

Soceity5.0を実現するためにはスマートシティ構想の重要な要素である交通インフラ「スマートモビリティ」の実現が不可欠となります。諸外国との競争が想像を超えるスピードで激化していくことからも、これからの10年を新たな決意とスピード感をもって官民連携し進めていくことが重要になるのではないでしょうか。

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