世界経済はIoT、ロボット、人工知能、ビッグデータなど第四次産業革命によって、社会に急激な変化をもたらしております。日本でも内閣府が新しい時代の成長戦略として「成長戦略実行計画」を公表し、世界に先駆けた取り組みが始まっています。
その中でも「Society5.0」は日本の目指すべき未来社会の姿として注目されています。
この記事では、なぜ日本がSociety5.0を実現し超スマート社会を目指すのか?Society5.0に関連する日本経済団体連合会の取り組みや国連が提唱した世界を変える17の目標「SDGs」など世界の動きなど「Society5.0」の視点から徹底解説していきたいと思います。
では、見ていきましょう。
日本が挑む「Society5.0」とは
Society5.0とは、IoT・ロボット・人工知能・ビッグデータなどの先端技術を活用しあらゆる産業や社会生活に取り入れることによって、経済発展と社会的課題の解決を両立し超スマート社会を実現するものです。
Society5.0は目指すべき未来社会の姿として2016年の「第5期科学技術基本計画」で提唱され、新たな社会を長期的視野で実行していく計画として政府主導で取り組みが進められています。
※「科学技術基本計画」とは、日本における科学技術振興に関する施策の基本となる事項を定めた「科学技術基本法」により策定され、日本経済の発展と国民の福祉の向上に寄与すること及び、世界の科学技術の進歩や人類社会の持続的な発展に貢献することを目的としています。
内閣府は以下の様にSociety5.0について定義しています。
「ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。」
なぜ、超スマート社会が「ゆたかな人間社会」を実現するのか
Society5.0のカギを握るキーワードは「超スマート社会」です。超スマート社会とは、日本が目指すべき未来社会のことを指しています。
世界では5Gなどの新しい通信技術やIoTの利活用が進むなか、ドイツの「インダストリー4.0」やアメリカの「先進製造パートナーシップ」、成長著しい中国の「中国製造2025」など、ものづくりの分野において各国が官民協力し、ICTを最大限に活用した取り組みをしております。
日本では今後少子高齢化が顕在化し、「生産」「流通」「販売」「交通」「医療」「金融」「健康」「行政サービス」などの幅広い分野において影響を与えることが予測されています。
これからの日本は『ゆたかな人間社会を実現する』ためにも、ものづくりの分野だけでなく様々な分野で取り組みを進め、課題解決と同時に経済発展も考えて行くことが重要です。
Society5.0はICTを最大限に活用して「必要なものを、必要な人に、必要なときに、必要なサービスを、必要なだけ」提供し、「人々が多様な生活や幸せを追求できる創造社会」となる超スマート社会を目指しているのです。
経団連が掲げる5つの社会
- 価値を生み出す社会
- 誰もが多様な才能を発揮できる社会
- いつでもどこでも機会が得られる社会
- 安心して暮らし挑戦できる社会
- 人と自然が共生できる社会
どうやって、日本が抱える課題を「打開」していくのか?
これまでの人間社会は、Society1.0からSociety4.0まであり「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」と進化してきました。日本はかつて世界第2位の経済大国でありましたが、経済成長力を欠いたことにより、GDPは中国に追い越され、現在も1位のアメリカ、2位の中国に大きく引き離され第3位となってしまいました。
日本は資源に乏しく、人口も減少するなかで「停滞する日本経済の成長力を強化」しなくてはならず、そのためにも世界に先駆けてSociety5.0に取り組むことが重要となります。
なぜなら、超スマート社会実現のノウハウや知識を蓄積することにより、知的財産化や国際標準化を進めていく必要があるからです。
Society5.0は日本が抱える社会的課題を解決する打開策として、超スマート社会の実現と経済発展を両立することを狙っているのです。
SDGsの課題解決が日本にとって追い風となる理由
日本にとって追い風となるのが、国連が掲げる「SDGs」です。
SDGsとは、2001年に策定されたミレニアム開発目標MDGsの後継として、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。SDGsは17のゴールと169のターゲットで構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを目標に、発展途上国も先進国も共同で積極的に取り組みを行っています。
SDGsが掲げる持続可能な社会17のゴール下記の通りです。
- 貧困を無くそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の良い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤を作ろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任、つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
出典:外務省
国連が掲げる17の目標にある飢餓問題や水問題など、日本人にはピンと来ないものも多いかもしれませんが、世界を見渡せば、いまだにこうしたインフラや格差といったものがあり、世界が抱える社会的課題となっているのです。
日本においても少子高齢化が深刻な国難となる可能性が高く、この課題を解決するための取り組みが急務になっています。
Soceity5.0はこうした世界の社会的課題も解決することを視野に入れているのです。
それでは日本ではどの様な取り組みを行っているのでしょうか。現在、日本で行われている取り組みについて詳しく見ていきたいと思います。
日本を解き放つアクションプラン4つ
日本の経済をけん引する日本経済団体連合会、通称「経団連」は、このSociety5.0やSDGsを日本が目指す方向性として様々な取り組みを行っています。
Society5.0やSDGsは、日本だけでなく世界が協力して創り上げていくべき社会モデルになります。そのコンセプトを発信し、世界のロールモデルとして日本が実現することで世界の経済社会を発展させることが重要です。
そうすることで、今後起こりうる課題に対し、持続可能な自然環境と経済システムの構築への可能性を証明することにもなり、結果、世界規模で実現していくことが可能になるのです。
それでは経団連が提唱する日本を解き放つアクションプラン4つについて見ていきましょう。
1.企業が変わる
Society5.0を世界に先がけて実現するためには、まず企業が変わることが必要です。
環境・社会・ガバナンスに配慮した産業構造を抜本的に改革すると同時に、日本の「想像力」×「創造力」の強みを活かして、これまでに価値があったものはさらに価値を高め、これまで価値のなかったものを価値のあるものに転換していけるよう、ICTなどをフル活用しながら持続可能な社会へ向けて組織を変革することが重要なミッションになります。
Society4.0時代には、企業の自己利益を追求した結果、環境を顧みない大量生産やCO2排出は地球環境を悪化させる原因となりました。しかしSociety5.0時代においては、社会や地球の課題解決や多様な顧客ニーズへの対応を通じ、社会的価値を創造することが企業にとって重要になるのです。
2.人が変わる
Society5.0時代において求められる人材はこれまでと大きく変化していきそうです。
Society5.0の時代は、様々なテクノロジーを活用し発展していく時代です。今後は人工知能やロボットを普及させ活用できるインターフェースとなる人材が、様々な課題を解決に導くための人材として求められるようになるでしょう。もちろん、機械によって淘汰される仕事もありますが、人間にしか出来ない仕事やテクノロジーによって生まれた新しいサービスへの雇用は進んでいきます。
そして人生100年時代と呼ばれるこれからの時代は、これまでのキャリアパス(教育、仕事、老後)も単線型ではなく、仕事と教育を行き来しながら社会の変化に対応が必要となります。
人々の能力の可能性を大きく伸ばしていく社会へシフトするためにも、教育機会の拡充や再就職等を支援する職業訓練などの仕組み作りを再編していく必要性を経団連は訴えています。
3.行政・国土が変わる
Society5.0時代の行政は、官民が連携し行政のあり方も変革する必要があります。そのためにはデジタルガバメント革命のような行政改革が必要です。
政府はICTをフル活用することで、これまでの縦割り行政から脱却し、制度や組織といった壁を超えた行政運営を行い、世界の経済スピードへの対応と社会課題の解決に取り組むことを目指しています。自治体によっては既に行政サービスのデジタル化が始まっており、「スマート自治体」に向けた動きが本格化しています。
また日本の少子高齢化や人口減少が急速に進むなか、これまでの市区町村といった基礎自治体単位での行政運営にも限界がきています。このまま人口減少に歯止めがかからない状態が続くと、ライフラインやインフラの維持すらも困難となってきます。これは税収が減ることで地方における自治体では財源の確保が難しいからです。
Society5.0定義にもあるとおり、誰にでも質の高いサービスを受けることのできる地域格差のない社会づくりを構築する必要性があることから、これまでの枠組みを取り払い、地方の自治体が主体となって行政改革をしていくことが重要です。
経団連は官民協力し、多様なライフスタイルとニーズを支えようとしています。
4.データと技術で変わる
現在の世界経済はアメリカや中国がインターネットを使った仮想空間での市場が世界での地位を固めたと言えます。そして今、現実空間へのインターフェースとなるAIスピーカーなどを開発し、仮想空間市場から現実空間市場へと移ろうとしています。
日本はSociety4.0時代に他の先進国に遅れをとりました。しかしSociety5.0時代においては、強みである現実空間つまりフィジカル空間における高い技術力活かし、機械学習による人工知能を活用したモノやサービスへの産業への転換を急速に進めることで、先進国としての新たな地位を確立することができるでしょう。
また超スマート社会の実現を世界に先駆け取り組む日本としては、行政や経済界に分散された多種多様なデータを組織の枠を超えて連携することも不可欠です。しかし「データ」を外部に解放することに強い抵抗感などがあり、社会的に公共性が高い防災や減災、ヘルスケア等といった分野でしか行われず、データと技術の連携ができていません。
世界におけるプライバシーに対する認識も変わりつつあるなか、プライバシーやサイバーセキュリティを確保し「安心、安全、高品質」を保ちながら、データと技術を円滑に活用できる社会を構築するためにも、価値創出の観点で国境を超えて「データ関連」のポリシーの確立を進め調和を図ることが急務であると考えています。
まとめ:Society5.0
如何だったでしょうか。Society5.0とは年齢や性別などに関係なく、誰にでも必要なモノやサービスを「必要な人に、必要なときに、必要なだけ」提供できる超スマート社会を目指しています。そしてサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合することで、世界に先駆けて社会的課題の解決と経済発展を両立する社会とも言えるでしょう。
これからの時代は民間企業も行政も一環となって新たな枠組みを再構築し、人々が技術を駆使しながら多様な価値を追求することがとても大切です。
日本ならではの多様な想像力と創造力を原動力として創りたい社会を構築していくSociety5.0は、日本の強みを活かし、課題をチャンスに変える経済活動は日本を解き放つ創造社会も創り上げるといわれる所以ではないでしょうか。