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【スマートヘルスケア】迫る2025年問題にヘルステックが新しい医療のカタチを実現する

新しい医療のカタチ!スマートヘルスケアサステナビリティ

世界的に高齢化が進んでいます。それと並行してスマホやタブレットといったモバイルの普及やIT技術が進化し、第4次産業革命によって、私たちの生活は大きく変化しようとしています。

ビッグデータやIoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)などを活用するヘルステックが注目されています。スマートヘルスケアとは医療分野を変革し、社会問題の解決にも繋げる取り組みです。同業種だけではなく、異業種のIT企業などが参入することで、これまでにはない新しい医療のカタチを実現しようとしています。

次の時代の医療を担う「スマートヘルスケア」

次の時代の医療を担う「スマートヘルスケア」

スマートヘルスケアとはIT技術を活用した新しい医療サービスの仕組みのことです。なぜ、スマートヘルスケアが注目されているのでしょう。それは長寿国で知られる日本は人生100年時代を迎え、医療の質の向上が求められていることや、団塊の世代(1940年代生まれ)が2025年に75歳以上となる「2025年問題」など、健康保険の予算拡大や医療費が増え続けることが見込まれており、高齢化の進行によって老々介護などの問題も顕在化しているからです。

さらには、医療現場では高い医療の質が求められる一方、高齢者のニーズが高まるなかで、地方における医師不足医療従事者の過酷な労働環境が深刻化しています。OECDで人口当たりの医師数が5番目に低い(2018年)ことからも医療業界の変革が求められているのです。

そこで注目されているのが、スマートヘルスケアです。ITを活用した新しい医療システムによって医療現場における様々な課題を解決し、誰もがより良い医療を受けられるような新しい医療のカタチを目指しています。

また、医療テクノロジーとITを組み合わせた「ヘルステック」によって、これまで紙で管理していたカルテを電子化し、クラウドで情報を共有することができることから、膨大なカルテを人工知能で自然言語解析を行ったり、CTやMRIの画像解析ができるなど、医療の質の向上と病気の早期発見や予防医学の推進に向け研究が進んでいます。

 

ヘルステックで実現できる新しい医療のカタチ

ヘルステックで実現できる新しい医療のカタチ

ヘルステックについて、ここで触れたいのが、ムーンショット型研究開発制度Society5.0です。2020年に日本政府が掲げたムーンショット型研究開発制度が2050年までに達成する目標です。

  • 2050年までに、臓器間の包括的ネットワークの統合的解析を通じて疾患予測・未病評価システムを確立し、疾患の発症自体の抑制・予防を目指す。
  • 2050年までに、人の生涯にわたる個体機能の変化を臓器間の包括的ネットワークという観点で捉え、疾患として発症する前の「まだ後戻りできる状態」、すなわち「未病の状態」から健康な状態に引き戻すための方法を確立する。

引用:内閣府「ムーンショット型研究開発制度」

日本発の破壊的イノベーションによってロボットとの融合の時代、つまり、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放される社会の実現を狙っています。また、Society5.0がそれを支え、人々が豊かに生活できる社会「超スマート社会」を創造しようとしています。

超スマート社会では、医療業界や個人の医療への関わり方が変わり、そしてヘルステックによって、新しい医療のカタチが到来すると言えそうです。未来の新しい医療のカタチとはどの様なものか見ていきましょう。

オンライン診療

オンライン診療

医療業界の課題として医師不足があるとお伝えしました。それは大都市圏に病院や医師が集中していますが、離島や地方などでは医師が不足し、十分な医療が受けられないからです。高齢化が進行することによって、さらに地方の人口減少が進むと病院自体の経営も苦しくなり、これまで以上に医療機関や医師の不足が深刻化するでしょう。

その一方で、モバイルの普及が進み、テクノロジーも進化していきました。ヘルステックは病院に診察や診療にいけなくても自宅でオンラインによる診療を実現しようとしています。これからの時代はクラウド上で受診履歴や既往症、血液型などの基本情報の他にCT、MRI、アレルギー、処方薬による副作用履歴(電子版お薬手帳)などを管理する電子カルテを活用しながら、スマホやパソコンを使って診察を受けることが可能となります。

オンライン診療は、地方の医師不足を解消するだけでなく、災害時に医療が必要な場合や新型コロナウィルス感染症の様な疾病の場合でも、医師と患者間の非対面診療は有効といえます。

オンライン診療は予約から診察及び処方箋や薬の受け取りまでがワンストップで行える便利な医療サービスです。離島や過疎地域にお住まいの方、外出困難な方、通院が困難なビジネスパーソンへ、必要なときに医療の提供が可能となります。

遠隔手術

遠隔手術

遠隔手術は遠隔地での高度な医療技術を必要とする手術に有効で、医療ロボット技術の進化に加え、VR(仮想現実)AR(拡張現実技術)のウェラブルデバイスを活用し、低遅延で超高速通信を可能にする新通信技術の5Gによって遠隔地医療サービスの質の向上が期待されます。

クラウドで管理された医療情報を元に、AIによる診断支援や画像解析技術×AIによる異変の疑いを判断することも可能となってくれば、オンライン診察や遠隔地治療サービスはより治療の質の向上にも期待ができそうです。

データの一元管理

データの一元管理

これまでのカルテは個々の病院で保管され、情報が独立していました。このことにより、通院歴や既往症などの情報が医療機関で連携されていないため、病院を変えるごとに同じような診察や検査を受ける必要がありました。電子カルテをマイナンバーなどのICカードで紐づけ、クラウド上でデータを統合することで、この問題は解消されます。

さらに治療の時系列が分かるようになることから、病気の進行も分析可能となり、将来における発症の確率や病気の進行もAIによって予測することも狙っています。

データの一元管理は個々の医療機器や技術の性能が良く、情報が蓄積されていたとしても、必要なときに必要な人へ提供が出来なくてはなりません。データを一元管理し医療機器とデバイスがネットワークで繋ぐヘルスケアシステムは、リアルタイムに医療情報の収集や解析が可能となるIoMT(Internet of Medical Things)の技術や概念によって、私たちのQOL(Quality of Life)向上を実現していきます。

ヘルステック市場に参入する巨大IT企業

ヘルスケア市場に参入する巨大IT企業

政府は2020年に健康・医療戦略を閣議決定し、健康と医療をめぐる我が国の現状を踏まえが世界最高水準の医療で健康長寿社会の形成を打ち出し、医療分野の研究開発やヘルステックベンチャー企業の支援を強化すると基本方針と具体的施策を公表しました。ヘルスケア市場は日本だけではありません。

世界においても、今後ますます重要性が増してきます。米国のビックテックである巨大IT企業のAmazon、Apple、Googleの親会社Alphabetといった、GAFAでおなじみ企業がヘルステック市場に参入しています。その一部を紹介します。

Amazon (アマゾン)
配送、AWS、アレクサといった自社の強みを活かし、オンライン薬局のスタートアップ企業の買収や、電子カルテ、AIソフトウェアの開発を計画しています。
Apple (アップル)
デバイスを活かした戦略をとっており、iPhoneの医療機関と連携したヘルスケアアプリの展開やApplewatch Series4からECG(心電図)機能がFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を取っています。
Alphabet (アルファベット)
米医療サービス大手ガイシンガー・ヘルスの最高経営責任者だったデビッド・フェインバーグ氏をヘルスケア部門「Google Health」の責任者に任命し、老齢化や遺伝子研究など行い、スマホでヘモグロビン値を計測するSenosis Healthの買収なども行っております。

今後、ヘルステックがさらに進化し、先進国の医療の受診スタイルは大きく変化することでしょう。医療業界と異業種のヘルステック企業が描く未来展望は、ロボットやAIが溶け込んだ社会システムの実現していくのではないでしょうか。

 

ヘルステック普及の課題

スマートヘルスケア普及の課題

昨今の医療現場における人材不足の一方で、高齢化に伴う医療サービスのニーズは高まっております。最新テクノロジーを活用したヘルステックの拡充によって、業務効率を図りながら、安定的な医療サービスを提供していくことが不可欠です。

今後、将来に渡り、新たな市場を生み出すヘルステック産業に大きな期待が寄せられますが、医療現場でのIoT活用に課題もあります。

まず、IoTのリスクにつきものの、セキュリティの信頼性です。データの一元管理が進めば医療業界に大きな変革をもたらすことにはなりますが、その一方個人の生命などに関わる生体情報を含む個人情報が含まれているため、サイバー攻撃などで情報の漏洩があってはいけません。治療履歴や薬の副作用、アレルギーといった情報が改ざんされてしまうと、誤った処置や投薬などで患者の生命の危険性もあるからです。サイバー攻撃に耐えうるクラウドネットワークの構築が必要となります。

つぎに、健康に対する個人の意識の向上がヘルステックの普及に課題になると考えられます。現在、ウェアラブル機器を使った健康状態の記録をするものがあります。健康状態に異常があった際に医療機関と連携することができるなど、利便性も上がっていくことから、これからの活用が進んでいくと考えられますが、現状では活用方法や効果が限定的といえます。

それは測定が面倒であったり情報が記録されることへの抵抗感などもあり、健康診断の直後や体調不良時には血圧を意識し生活の改善に役立てることはあっても、健康時には意識をしない傾向があります。健康を意識している方は多いものの、予防医学に対する意識の向上も並行していく必要があります。

ITを活用した新しい医療サービスにおいて、従来のITにおけるリスクを考える必要があり、どんなに性能が高いサービスが登場しても、それを活用する人々の意識向上がなければ、普及の障壁となってしまいます。医療現場もヘルステック企業も、そして、それを利用する私たちが意識改革することで、スマートヘルスケアによる超スマート社会の実現に一歩近づくのではないでしょうか。

 

まとめ

如何だったでしょうか。スマートヘルスケアで新しい医療のカタチが実現します。ヘルステックは医療サービスだけでなく、老齢化に伴う老々介護への課題にも挑戦しようとしています。介護の現場での人材不足や入浴やおむつの取り換えなどの重労働を解消する介護支援ロボットも研究開発が進んでいます。

高齢者のメンタルケアや見守りサービスなども拡充など、超スマート社会に向け、ヘルステックが医療や介護のブレイクスルーになることを期待します。

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