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【5G】デジタルサイネージがEコマースにもたらすショッピングの未来

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世界で新型コロナウィルス感染症が蔓延したことにより、ロックダウンや自粛ムードで気軽にショッピングすることもできず、オンラインショッピングで買い物をする人が激増した。世間はいま、コロナ一色なわけだが、思い出して欲しい、2020年は5G元年である。

緊急事態宣言が解除された今も、感染症予防の観点から対面や接客などに気を遣うわけだが、レジを通さない「Amzon Go」のような無人AI店舗や「タッチレスゲート」技術が広まれば、人との接触を心配しなくてもいい。世の中は新しい買い物のカタチを望んでいる。

タッチレスゲートに商機到来

JR東日本タッチレスゲート

出典:JR東日本「タッチレスゲート」

Amazon GoとはAmazon社が提供する無人店舗型コンビニである。店舗にレジがないことがAmazon Goの最大の特徴だ。完全キャッシュレスとウォークスルーを実現し、会計のためにレジに並ばなくていい。入口のゲートでQRコードを使って本人認証を行えば、後は店舗で好きなものを手に取り持って帰れば自動的に決済される仕組みとなっている。

日本国内ではAmazon Goの出店こそないものの、シアトルでは既に営業をしている。いずれ、日本にも進出してくることだろう。

日本も負けていない、JR東日本がタッチレスゲートを開発した。タッチレスゲートとはスマホに専用アプリを入れることで駅の改札機にSuicaをタッチしなくても鞄に入れたままでも通過できるのだそう。導入は2~3年後となりそうだが、将来的に顔認証で個人を認識する改札機も開発するそうで、改札機自体もなくなる日も近い。

 

出遅れたキャッシュレス化に明るい兆し

キャッシュレスを耳にする機会は増えたが、日本はキャッシュレス化が進んでいない。その原因のひとつは高齢化の進行にあると思っている。高齢者は新しい変化を毛嫌いする傾向が強く、新しいものを積極的に取り入れようとしないからだ。だがそんな高齢者も感染症の脅威が猛威をふるうなか、誰が触ったか分からない紙幣や硬貨よりも、クレジットカードも含めたキャッシュレスの方が安全でスマートな会計だということに気づき始めている。コロナの影響によってキャッシュレス化を敬遠していた人々の意識が変わり始めているのだ。

そしてキャッシュレス先進国ではQR決済が主流となっている今、日本が、QRさえも使わない「タッチレス技術」や「顔認証決済技術」の先駆けとなれば、キャッシュレス導入の出遅れを取り返すことができるかもしれない。非接触型決済は難しい操作が何一つなく、スマホさえ持っていれば誰にでもキャッシュレス化ができる。一度体験したら機械の苦手なお年寄りでも導入のハードルは下がるだろう。

 

Xコマースで消費行動が変わる

Amazon Goやタッチレス技術は買い物における5G時代の新しい決済のカタチだ。

支払のためにレジに並ぶストレスから解放され顧客満足度に良い影響を与える。この顧客満足度だが、意外にも日本のキャッシュレス化が遅れている原因の一つでもある。それは日本の接客レベルが高く、商品も充実している店舗が多いからだ。同じものがネットで販売していたとしても、実店舗での店員との交流を求め、オンラインショッピングではなく店舗で購入する傾向がある。

だが、5Gによって変化が生まれると考えている。

5G時代の買い物は「Xコマース」時代へ突入するだろう。4Gでは困難だった、大容量を要する高精細な8K画像の配信や3Dコンテンツが5Gの超高速通信、大容量によって可能となれば、動画、ライブ、VRを活用したコマースが主流となってくるからだ。実店舗でもデジタル化が進んでいくことも考えられる。

従来のEコマースは沢山の静止画の商品群からお気に入りの商品を探していた。これが5Gを使った動画コマースになると、商品の魅力が伝わる動画が表示されるようになる。VRコマースにおいては、バーチャル環境の店舗で店員との会話も楽しめたり、感触や香りなども分かるようになる、あたかも実店舗で買い物をしているかのような感覚になるようだ。

そしてWEB上の実演販売型のショッピングであるライブコマースも活用が進むみられており、中国では50億ドル市場と言われるほど注目度が高い。ライブコマースは文字通り、ライブ感が重要となる。話し手が商品の魅力を伝え、購買に繋げることのできる話術が必要となる。ユーチューバーインフルエンサーの活躍が期待できそうだ。

こうしたリアルとバーチャルが複合することで、仮想現実の世界にリアルも求めることができる。リアルとバーチャルの境界線はなくなると考えられる。

次に商品の検索方法についてみてみよう。海外ではスマートスピーカーやスマホの音声認識機能が日本に比べよく使われている。今後音声検索が伸びていくことからもボイスコマースの需要が伸びるのだそう。3年後の商品購入手段は何を使いたいかの問いに「実店舗で購入したい(11%)」と答える人を抜き、「ボイスコマースで購入したい(21%)」が2位という結果(1位はオンラインで59%)が出ているくらいだ(Amazon PAY 2020年調べ)。声紋確認技術が登場すれば、ボイス決済も可能となるだろう。

5Gに対応したモバイルの普及やインフラの整備の課題はあるものの、これらのXコマースが中心となって、私たちの消費行動は大きく変わるだろう。

スマホを持たない時代がくる

スマートシティの時代にはスマホさえ不要になるのではないかと考える。プライバシーやスコアリング、地域格差などの課題はあるものの、ウェアラブルスマートスピーカーなどを使って買い物が一般的になるだろう。そしていずれは個人がデバイスを持たなくても買い物ができるだろう。

その理由の一つは、既に人々はレコメンド広告によって購買の意思決定をしており、従来の消費行動である「目当ての商品を探し、商品を比較検討して決済をする」という消費行動に変化が生じているからだ。レコメンドは自分の趣向にあった商品を提案してくれるから、消費行動を簡素化し、顧客満足度の高い意思決定がしやすくなっている。比較検討という消費行動がなくなることは生活行動が変わるということなのだ。

そしてもう一つは、スマホなどデバイスの重要性の変化である。実際に声紋認証顔認証人工知能(AI)技術が上がってきている一方で、スマホ自体は既に技術的な過渡期に来ている。昨今のデバイスを見ても大きな進化はないうえに、スマートスピーカーでの音声検索やボイスコマースが中心になれば、デバイスの個々の性能は重要ではなくなる。その進化の過程でIoTに音声認識機能が組み込まれた方が手ぶら生活が出来て便利だ。いずれスマホを持たない生活になるかもしれない。

 

デジタルサイネージがコンシェルジュとなる

人々のデバイス離れを後押しするのが、「デジタルサイネージ」ではないかと考える。デジタルサイネージとは、電子広告や電子看板とも言われるもので駅やデパートなどにもディスプレイを使った広告として最近、目にする機会が増えている。

JR品川駅には「AIさくらさん」というAIタッチサイネージが設置されている。オリンピックに備え設置されたものだろうが、驚くのはその性能だ。8言語に対応しており、レストランやお土産、コインロッカーの案内、乗換案内などを提供する。AIさくらさんに話しかけることも可能で、質問にも答えてくれる。下記動画は感染症対策が施された「非接触AIさくらさん」画面に触れずに音声とジェスチャーで操作が可能となっている。

AIさくらさんのようにデジタルサイネージに人工知能(AI)を組み合わせると、ただの広告や看板としての機能で終わらない。人工知能(AI)への質問は情報の収集や分析ができる。顧客のニーズをつかみ、行動分析されマーケティングに活かすことも、社内ヘルプデスクなどにも応用できる。広告が人のニーズを判断するダイナミックDooHという広告手法はデジタルサイネージを見ている人の時間や天気など周辺環境の変化に合わせ、顧客のニーズにマッチする広告を表示する。

下記動画は、ニューヨークのタイムズスクエアにあるボディソープのDoveのデジタルサイネージだが、天候によって、放送される内容が異なるのだ。デジタルサイネージは通常の看板と異なり、状況に応じて変化させることができることが強みと言える。

このようなデジタルサイネージが街のいたるところに存在するようになる。デジタルサイネージに話しかければ、質問にも答えてくれるし、欲しいものがあればその場で注文すればいい。スマホを持たなくてもデジタルサイネージの高解像度カメラで顔認証すれば欲しいときに欲しいものを買い物ができるようになる。街のいたるところにあるデジタルサイネージは「無料で使えるデバイス」となって便利な世の中になる。デジタルサイネージは私たちのコンシェルジュとなりパーソナル化されたショッピング体験をもたらし買い物のカタチをアップデートするだろう。これからの未来に注目したい。

 

Xコマースやデジタルサイネージの課題

Xコマースやデジタルサイネージ普及に死角はないのだろうか。いくつか課題については触れているがここでおさらいしたい。

まずは5Gを世界の人が体験する必要がある。そのためには5Gに対応した端末やIoTの普及が課題だ。また、4Gの基地局とは別に5Gの基地局が必要になるためインフラ整備が重要となってくるが、5Gは基地局の通信範囲が狭く、4Gと比べて屋内への電波が届きにくいという通信上のデメリットがある。そのため場所や電波状況によっては繋がらなかったり、4GのLTE通信となってしまうこともあるようだ。様々な業種でリモート作業で使われることも考えると電波の特性による課題をクリアしていかなければならない。

さらには、Xコマースやデジタルサイネージ以外にも、ドローン配送IoT機器自動運転モビリティなど、5Gを利用するものが増えてくる。5Gがいくら多数同時接続が特徴といっても、いずれ接続数の限界が来ることが想定される。

そういったサービスエリアの狭さや基地局の設置の課題もあるので地域格差も出てくるだろう。大都市においてはデジタルサイネージの設置は多いものの、地方においては設置数もまばらになることが考えられるからだ。

今後しばらくは5Gの恩恵に格差が生じる可能性が高い。そういった意味で5G時代は便利な世の中への移行期と考えられる。誰もが享受し実感できるようになるのは、次の世代の6G以降になるのではないだろうか。

世界でデジタル化やキャッシュレス化が加速している。世界経済に日本が取り残されないためにも5G技術を活用した新たなビジネスの創出が不可欠である。

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