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ブロックチェーンとは?社会問題を解決するしくみだった

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仮想通貨(暗号資産※1での決済や送金に非常に重要な技術と言われているのが「ブロックチェーン」です。金融とテクノロジーを組み合わせた「フィンテック※2も、このブロックチェーン技術を応用した金融革命と言われております。

ニュースやメディアなどで頻繁に目にすることが多くなったブロックチェーンですが、

ブロックチェーンの仕組みがいまいち理解できない

ブロックチェーンがなぜ注目されているのかを知りたい

ブロックチェーンが今後どんな分野で活躍するのか知りたい

など、疑問を抱く方は多いかもしれません。

私は、仮想通貨交換業を営む会社で働いたことがあり、入社当時、仮想通貨や業界のことを理解するのに一番最初にぶつかった壁こそが「ブロックチェーンの仕組み」でした。

今回は、自分がブロックチェーンを学んだときの経験をもとに、技術的な用語を極力使わず、ブロックチェーンの基本的な仕組みやメリットやデメリットなどを中心にブロックチェーンの世界について紹介します。

※1「仮想通貨」は「暗号資産」に呼称変更されておりますが、本記事では一般に定着と浸透している名称「仮想通貨」にて記載しております。
※2フィンテックとは米国発祥で金融と技術の「Fainace」と「Technology」を組み合わせた造語です。

ブロックチェーンとは

ブロックチェーンは1つの論文から始まった

ブロックチェーン仮想通貨のビットコインの中核技術として知られております。
2008年、電子通貨ビットコインについて9ページにまとめた「サトシ・ナカモトの論文」が始まりとされています。

インターネット上で行われる取引における、電子支払プロセスは信頼できる第三者機関を必要といています。そのほとんどは第三者機関として金融機関が請け負い、大抵の取引は問題なく機能しています。

その一方で信頼に基づくモデルにはつきものの脆弱性が課題とされながらも、その解決策がこれまで見つからなかったことを指摘し、セキュリティーと安全性について新たなシステム構築について提案をしています。

▶ サトシ・ナカモト論文

Abstract. A purely peer-to-peer version of electronic cash would allow online payments to be sent directly from one party to another without going through a financial institution. Digital signatures provide part of the solution, but the main benefits are lost if a trusted third party is still required to prevent double-spending.

We propose a solution to the double-spending problem using a peer-to-peer network.

The network timestamps transactions by hashing them into an ongoing chain of hash-based proof-of-work, forming a record that cannot be changed without redoing the proof-of-work. The longest chain not only serves as proof of the sequence of

events witnessed, but proof that it came from the largest pool of CPU power. As long as a majority of CPU power is controlled by nodes that are not cooperating to attack the network, they’ll generate the longest chain and outpace attackers. The network itself requires minimal structure. Messages are broadcast on a best effort basis, and nodes can leave and rejoin the network at will, accepting the longest proof-of-work chain as proof of what happened while they were gone.

以下は、超訳したものです。

従来の第三者機関を利用した信頼による取引ではなく、暗号技術に基づいたシステムで非可逆的な取引※1を行い取引履歴をP2P分散タイムスタンプサーバー※2を用いることで2重支払問題も解決します。

第三者機関を持たない支払いシステムがサイバー攻撃者のノード※3群よりもCPU能力で上回ればセキュリティ的に安全です。

※1 可逆的な取引がクレジットカード払いや銀行振り込みなどで非可逆的な取引は通貨や紙幣といった現金取引で換金性のある商品券なども含まれる。
※2トランザクションをブロックに詰めて全体をハッシュして次のブロックに繋げることによって前後関係や時系列が明確になることや過去の取引が公開されていることによって不正がないことを証明できるとするものです。
※3 ブロックチェーンにおけるノードとはネットワークにおける分岐点や中継点をさし、ネットワークに接続されているコンピューター群のことを指します。

ブロックチェーンの構造について

ブロックチェーン構造

各取引情報は順番に格納。各ブロックが直前のブロックと繋がっている為、改ざんが極めて困難。

ブロックチェーンを理解する際につまずくのが、「ブロックチェーン構造の難しさ」です。技術用語が多く難しく感じる方が多いようですので、ポイントのみ紹介します。

  1.  ブロックチェーンは複数のコンピューターで分散して取引を管理しています。
  2.  ネットワーク上で発生した個々の取引記録を詰め込んだもの(トランザクション※1)をブロックと呼びます。
  3. 1つのブロックは10分ごとにつくられブロック全体を暗号化(ハッシュ※2)を行います。
  4.  時系列で格納してから次のブロックへつなげていくデータ構造になっています。

ブロック同士がつながっていく構造こそ「ブロックチェーン」と呼ばれる理由です。

いかがですか?

上図を見ながらイメージすると分かりやすいと思います!

※1 複数の処理を1つにまとめること
※2 ブロックチェーンにはハッシュ関数(任意の入力値に対し、必ず決まった長さの文字列を出力する)へ暗号機能をつけた暗号学的ハッシュ関数が使われている

 

ブロックチェーンが優れていると言われる理由

仮想通貨イメージ

仮想通貨って、「名前からして怪しい・・・・

仮想通貨のネーミングセンスを考えてしまいますよね。

仮想通貨が怪しいとか、危険というイメージが強い人が心配してしまうのが、仮想通貨は簡単にハッキングされて盗まれるから「不安」なものと考えている人が多いです。マウントゴックスやコインチェックなど、取引所のハッキングによる被害で仮想通貨が盗まれるというニュースを耳にしたことが理由だと思います。

確かに仮想通貨は取引所のセキュリティが脆弱でハッキングされた事件はありますが、「ブロックチェーンの改ざんやシステムダウンをしたことは一度もありません!」

仮想通貨はブロックチェーンで作られたプログラムです。

円やドルといった国が発行する法定通貨とは異なりますが、「通貨」としての機能を持っています。法定通貨を発行する国が仮想通貨を「通貨」として認めずに放置している間に、流通が広まりプログラムに対して通貨と同等の価値が認知されたにも関わらず、対応が遅れてしまったことが原因です。

極論を言ってしまえば、仮想通貨における関連法規が未整備だったことが、取引所や交換所などにおけるハッキングを許してしまったことが最大の理由だと思います。

現在の日本においては金融庁が法整備を行い、取引所の開設の審査基準を強めるなど、サイバー攻撃によるセキュリティーに不安がない、安全な仮想通貨の取引ができるように指導を進めています。

取引された台帳を分散して管理していることで安全性が高い

ブロックチェーンイメージ

ブロックチェーンを理解する際に構造の次につまづくのが、「ブロックチェーンの特徴である分散型台帳のしくみが複雑」ではないでしょうか。

ブロックチェーンの安全性を説明する前に、既存の銀行システムは固有の課題として脆弱性を持っており、対策には限界がきていることについて説明します。

まず、脆弱性の一つ目として上げられるのが、銀行が保有するサーバーは預金者の取引情報が管理されており、情報を一元管理している拠点をサイバー攻撃を受けてしまうと、情報漏洩や不正送金のリスクがある点。

二つ目は、クライアント側の「電子証明書」や「ワンタイムパスワード」を盗み、アカウントを乗っ取ることで不正な取引が可能となる点。

三つ目は、上記リスクは中央集権型システム固有の課題で、どんなに高度なセキュリティー対策をしてもサイバー攻撃のレベルはさらに高度に進化しているため、セキュリティーに限界が来ている点。

四つ目は、システムダウンしてしまうと、システム自体が機能しない点。

ブロックチェーン技術は、取引情報をネットワーク状で分散して保存し管理を共有する(分散型管理台帳の)仕組みのため、既存の銀行システムのリスクがない!

メリット1 銀行のような第三者機関は存在せず、取引ができる

金融システムは、銀行のようにお金を保管し管理する第三者機関が必要な中央集権型のシステムとなります。一方、ブロックチェーンは取引の管理をユーザー同士で台帳を分散管理しているため、仲介となる第三者機関が不要となります。

第三者機関が不要な部分をもう少しかみ砕いて説明しますと、取引に参加するユーザーは、ネットワーク上で行われる取引情報をブロック単位で暗号化を行い、同じブロックを分散して記録と保存を行います。
同時に、すでに保存されいるブロックと次のブロックをつなげることユーザー同士で共有することによって承認しております。
このユーザー同士が承認しあうことが、第三者機関の承認がなくても取引が成立する理由です。

メリット2 取引した記録の足取りを誰もが追うことができる

金融機関がサイバー攻撃を受け不正送金された場合を考えると、「不正送金されたお金の足取りを追いたい」と取引履歴などからお金の足取りを追おうとしても非常に困難な作業となります。

さらには、不正に送金されたお金が他国の金融機関を転々と分散され移動してしまうと、「他国の金融取引記録や履歴を閲覧することすらできない」ことから、足取りすらつかめなくなってしまいます。

一方、ブロックチェーンはどうなっているかというと、ブロックチェーンの過去の取引記録は全て公開されています。ブロックチェーンの取引履歴の匿名性は担保されていますが、「ブロックチェーンの取引履歴は誰でも検証が出来るので足取りを追うことができる」ので、過去に遡って取引が成立しているかを確認することができます。

メリット3 全員のブロック情報が消滅しない限り安全

中央集権型、つまり既存の金融システムの脆弱性のなかに、情報を一元管理しているサーバーやクラウドをサイバー攻撃を受けてしまうとリスクが生じるということを説明しましたが、仮想通貨など、ブロック情報を持っている「パソコン」がハッキングされることへの心配や不安があるかもしれません。

保管されたブロック情報を喪失してしまった時にリスクはないのか?

分散型台帳の仕組みにより、取引に参加したユーザー同士(パソコン)は同じ台帳を保有しています。例え、その一部のパソコンやブロック情報が喪失をしても、保有ユーザー(パソコン)全員のブロック情報が消失しない限り、取引情報は損なわれることがないため安全といえます。

メリット4 海外送金コストを抑えることができる

円やドルなどといった「法定通貨」を銀行で海外送金をしようとすると、「海外送金は手数料が非常に高い」と思う方は多いのではないでしょうか。

仮想通貨を使った海外送金の手数料は大幅に違います。例えば、日本から日本円で1万円(USD)をアメリカへ送金しようとした場合、約4,750円の手数料がかかります。ビットコインなどの仮想通貨で送金すると200円程度の手数料にコストを抑えることが出来るのは魅力ではないでしょうか。

ブロックチェーンでの取引情報の改ざんは極めて困難

金融システムのリスクでも不正送金への不安があったように、仮想通貨についても「サイバー攻撃による、ブロックチェーンの改ざんへの不安」はあるのではないでしょうか。

ブロックチェーンは取引情報の改ざんが極めて困難とされています。

その改ざんが困難な理由としては、ブロック内の情報を改ざんしようとする場合には下記条件をクリアすることが必要となります。

  1. 書き換えたブロックがそれ以降に生成されたブロックにつながらない仕組み
  2. 10分おきに格納されるブロックに対し、前後のつながりも書き換えないといけない
  3. 正当なブロックの繋がりよりも速く不正ブロックを長く繋げないといけない
  4. 上記プログラム書き込むために必要なコンピューターを用意しなくてはならない

それでも極めて困難な訳で、ブロックチェーンの改ざんの可能性は理論上、ゼロではありません。

ブロックチェーンを改ざんするためには51%攻撃しかない

ブロックチェーンの改ざん

理論上、51%攻撃を受けて正当ブロックより不正ブロックが長く繋がってしまうと改ざん可能。

どんなものにも、良いことばかりではなく、脆弱な部分は兼ね備えています。

ブロックチェーンについても51%攻撃と言われる、ブロックチェーンのネットワークにあるユーザーの51%以上の計算力を保有しネットワークを攻撃をすると、理論上改ざんが可能となります。

現実的にはそれだけの計算力を手に入れるためのコストや過去取引の改ざんができないことなども考えると、攻撃者のメリットは限定的と言えますので、理論上可能だとしてもリスクは低いといえるでしょう。

 

ブロックチェーンの応用技術はどこで活用されるのか

ブロックチェーン技術の応用

ブロックチェーン技術は仮想通貨から始まっていることから、「ブロックチェーンはデジタル通貨以外に技術が応用できるのか?」という疑問が湧いてきそうです。確かに、ブロックチェーンは、仮想通貨の基盤技術として世の中に出てきたものです。

しかし、ブロックチェーンの分散型台帳は公開検証可能なオープンデーターベースでもあります。

ブロックチェーンの特徴をもう一度おさらいすると、「安全性や確実性が高く、取引の正当性を確認し処理を進めること」を可能にする技術であり、「ブロックチェーンは、次世代型ネットワーク技術」であると言えます。

次世代型ネットワーク技術ともいえる、ブロックチェーンを応用することで、これまで、紙ベースで行っていた取引や契約手続きの煩雑さが解消できます。

この分散型台帳のしくみを活用した不動産などの資産や株の売買などのブロックチェーンによる取引は、取引情報をネットワークでを管理し共有することで、同時に確認をしながら取引を進められることで処理時間を短縮し安全に処理を進めらるようになりました。

次世代ネットワークのシステム設計にコストをかけず、シンプルにシステムを開発することが出来ることから以下の様な分野で脚光を浴びています。

フィンテック分野

ブロックチェーン技術にいち早く目をつけたのがフィンテック分野です。アメリカでは既に証券取引の決済にブロックチェーン技術を取り入れた実験にも成功しています。

これまでの資産の所有権や売買記録などをブロックチェーンで教諭することによりセキュリティーの担保や不正取引の検知など活躍の幅が広い分野となります。

キーワード証券取引、保険証券取引、不動産取引、清算・決済システムなど

貿易物流分野

貿易や物流といった国際取引をする分野では、ペーパーでのやり取りが中心となっており未だに電子化が進んでおりません。

書類の処理が煩雑な上に処理がかかることから、ブロックチェーン技術のもつ分散型台帳のデーターベースによって同一情報を保持し確認しながら処理を行うことで、大幅な時間短縮やデータの信頼性・安全性の面で期待できます。

キーワードL/C(信用状)、B/L(船荷証券)、インボイス、配送システム など

医療分野

医療業界においても手続きの煩雑さや効率の悪さが課題となっております。

さらには管理コストが高いのも課題でした。事務処理にブロックチェーン技術を活用することで、処方箋手続きなど医療機関と処方箋薬局での情報を共有することができるななり、手続きの短縮やデーターベースの整合性などといった面で期待ができます。

キーワード医療機関、薬局、処方箋、医療記録、カルテなど

 

まとめ 

第三者機関を不要とするブロックチェーン技術を応用することで、ビジネスプロセスの効率化ができますので、取引の手続き革命といえるのではないでしょうか。

懸念される取引情報のプライバシー保護については、参加できるユーザーを特定し閲覧や各処理の実行などの権限を制限することでプライバシー面でも安全なシステム開発が可能となります。

ブロックチェーン技術はこれまでの業界の常識を変え、社会問題を解決する糸口になるかもしれません。

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